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鮎の街・岐阜県に集うバンドマンたちの祭典。地域シーンのアツい2DAYS、開幕間近!

岐阜県岐南町で開催されるバンドフェス「SWEET FISH TOWN」の歴史に迫る

著者:MuseMate編集部  2023/11/21  無料

――全国各地に「ライブハウス」と名の付くお店がある。そこには趣味のアマチュア親父バンドから、平日は会社員で土日にプロ顔負けの演奏を披露するセミプロ、地方に根を張り多くのファンを抱えるプロまで、さまざまな「バンド」が出演している。地上波で目にするようなメジャーバンドに限らず、特定の地域を拠点に最先端の音楽を発表しているバンドも実は数多く存在するというのがバンドシーンの面白いところだ。今回はそんな地域のバンドシーンの中でも、岐阜にまつわるバンドやアーティストが集うフェス「SWEET FISH TOWN」を主催する日比野渉さんへの取材を敢行した。

始まりは13年前。歴史の長い岐阜のバンドフェスがコロナ禍を乗り切り再開へ

MuseMate編集部(以下、MM):岐阜のバンドフェス「SWEET FISH TOWN(以下、SFT)」実行委員長の日比野渉(ひびのわたる)さんにお越しいただきました。本日はよろしくお願いします。

日比野:お願いします。

MM:SFTはいつ頃からスタートされたのでしょうか?

日比野:第1回は2010年でした。

MM:かれこれ10年以上続いているのですね。今回が何回目になるのでしょうか?

日比野:12回目になります。

MM:2010年から始まって、今年(2023年)が12回目ということは、途中で何かが……?

日比野:そうなんです。2019年がちょうど10回目で、記念Tシャツを作ったりなんかもしたんです。でも、その翌年からはコロナ禍ということもあり「ちょっとお休みした方が良いかな」という状況になりまして……。2020年、2021年は休んで2022年に再開したという感じですね。

「お客さんを取り合うのも変だよね」バンド仲間が集まってフェス企画始動!

MM:このフェスはどういった経緯で始まったのでしょうか?

日比野:実は私自身も昔はバンドをやっていて、岐阜を中心に活動していたんです。特に自主企画に力を入れて、岐阜のライブスポットで演奏したりなんかもしていました。その中でいろんなバンドと知り合ったんですが、仲良くなったバンドとお客さんが被るという問題が出てきたんです。自主企画で一緒にライブをやると、同じお客さんに誘いが行っちゃったりとかして。仲間内では、「せっかく仲良くなったのにお客さんを取り合うのも変だよね」と話していました。

MM:ああ、確かにそれは地方のバンドあるあるかもしれません。

日比野:やっぱりもっとたくさんの、自分たちのことを知らないお客さんにも見て欲しいという思いがあって。ちょっと前までは「バンドでどん」というコンテストイベントや、街中で開催される「Beans Festa」など、岐阜で開催してるイベントがあったんですけど、当時はちょうどそれらが終わってしまった時期だったんです。「フェス的なイベントが今はないね」と話したりもしていました。

そんな中で、仲間内のバンド3つ、4つで一緒にやってみようということになりまして。野外フリーライブというのも夢ではあるんですけど、雨が降った場合などのリスクを考えて屋内開催ということでスタートしました。

MM: なるほど、最初は対バン企画のような感じで。

日比野:はい。フェスと言っていいのかという規模ですが、7組の出演で行ったのが最初ですね。それなので、「地域のために」とか「岐阜のバンドを盛り上げよう」という感じで始まったわけではなく、「自分たちをもっと広めたい」という私利私欲から始まったのが正直なところだったりしますね(笑)


2022年開催時の様子。写真は「BRIGHT LIGHT」のステージ。

それでも反映されていた地域色。「SWEET FISH TOWN」の由来とは?

MM:「SWEET FISH TOWN」というイベント名の由来もお聞きしてよろしいでしょうか?

日比野:イベントを企画した当初、一緒にやっていた4つくらいのバンドから代表者が集まって、実行委員会のような感じで話し合いをしていました。その時から「岐阜のバンドだっているんだぞ」という思いがあって、岐阜のバンドだけでどこまでできるかっていう挑戦みたいなところもあったんです。

そこでイベント名を考えた時、「岐阜といえばなんだろう?」という話になりました。岐阜といえば長良川という綺麗な川があるんですが、鮎がとれることで有名なんです。その鮎の英語名が「sweetfish」というそうで。なんかこう、味わって食べると甘い味がするという……実際甘いとはあまり感じたことはないのですが(笑) そこで、鮎の街ということで「SWEET FISH TOWN」と発案したメンバーがいまして、「いいね!」という感じで決まりました。

MM:なるほど。岐阜とちゃんと関わりのある由来だったわけですね。


『SWEET FISH TOWN』のロゴ。

公募は一切なし! それでも気付けば16組出演の2Daysに成長

MM:7バンドから始まって、今年は2日間の公演で結構な規模になってますよね。どのようにして参加団体が増えていったのでしょうか?

日比野:最初は本当に手始めに、自分たち4バンドが知り合いのバンドを一組ずつ連れてきて…ぐらいの感じで7組でした。でも、やっぱりもうちょっとバンド数を増やしてお祭りっぽくできたらいいなということで、増やしましたね。

MM:それは公募か何かをして?

日比野:実は最初から今まで、公募という形はとっていないんです。というのも、公募しちゃうと予定枠よりたくさん応募が来た時に断らないといけなくなっちゃうので。「誰が断っとんねん」みたいな気持ちになるんですよ……。そういうジャッジをするのがちょっと心苦しいなというのがありまして、だったらこっちからお声がけして断られる方がまだいいやという精神です。

MM:なるほど、よくわかります。ということは裏側で色々ブッキングしていく中で、気づけば声をかけるバンドが増えていったということでしょうか?

日比野:そうですね。2Daysにしたのが2015年からで、それまでは1日で11組とかやっていました。でも、それだと観てる人も仕切ってる僕らも疲れるね、ということで8組に減らしたこともあったんですが、「8組だと普通に自主企画である数じゃん」って言われちゃったりして。「なんだと!?」と思って、「だったら2日やろうぜ」ということで2Daysになりました。


2023年のフライヤー。2Daysで総勢14組が出演する。

出演は最大16バンド、その心はコンピレーションアルバムにあり

日比野:SFTの特徴として、1回目からやってる「コンピレーションアルバム企画」というのがあります。出演者から1曲ずつ提供してもらって、アルバムを毎回作っているんです。

MM:素敵な企画ですね。コンピレーションアルバムを作り始めたきっかけは何かありますか?

日比野:当時、自分たちがブッキングライブとか自主企画をやっても、お客さんはお目当てのバンドが終わったら帰っちゃうという状態がよくあって。その防止策として、イベントに参加したバンドの曲をCD-Rに焼いたものを事前に配りまくるということをやりました。「このイベントはこういうバンドが出ますよ」みたいな。

1回目が開催された2010年は、まだそんなにサブスクとかが盛り上がってない時代でした。ネットで音楽を聴けるというのがあまり一般的じゃなかった時期なので、そういう手法でお目当てのバンド以外にも目を向けてもらう方法をとってたんです。「手売りチケットにコンピアルバムがついてきます」という触れ込みでやっていました。

現在はチケットの手売りも少なくなってきて、取り置きという手法に変わっていたり、CDも事前に受け取らなくてもYouTubeとかインターネットを介して聞けるというふうに変わっているんですが、それでも今も形を変えて続けています。

CD-Rって収録できるのが最大約80分とかなので、そこから逆算していくと収録するのは16組が上限だったりするんですよ。今年は14組ですが。このような感じで、最大アーティスト数を決めています。

長丁場のフェスイベント、意外と大事な会場選びのポイントとは?

MM:イベントの会場は、ずっと今回と同じところなのでしょうか?

日比野:1回目だけ違うんですけど、2回目以降はずっと岐南町の「岐阜CLUB ROOTS」さんというところでやらせてもらってます。

MM:会場の魅力や、特色がもしあればぜひお聞きしてみたいです。

日比野:ROOTSさんの他にはない魅力は、舞台が結構高いところです。照明も音響もばっちりで、演奏するには大変気持ちの良い舞台ですし、舞台が高いとお客さんも見やすいですよね。あとはバーカウンターもしっかりあって、そこで休憩できたりもします。ライブが長丁場だったりすると良いところなのかなと思います。


「岐阜 CLUB ROOTS」のステージ。

バンドマンから裏方へ。実行委員長、日比野さんは一体何者?

MM:日比野さんのご自身のこともぜひお聞きしたいです。今は何をメインに活動されてるのでしょうか?

日比野:『The WANDER』っていうバンドで2002年くらいから音楽活動をやっていたんですが、15年くらい活動して2017年に解散しました。そこからバンド活動はやっていなくて、今は音楽関係はこのSFTの実行委員長と、あとはインディーズレーベルのようなことも少しやっています。これは岐阜に限らずなんですけど、音楽関係で知り合った人の中にはサブスク配信などに疎い方もいるので、そのような方のお手伝いもしています。

MM:今は裏方業に回っているのですね。今回のイベントは、運営メンバーは何人くらいいるのでしょうか?

日比野:今メインは2人です。私ともう一人、東京にいろいろ相談に乗ってもらったりする、ゆきのという子がいます。当日はカメラマンとしてライブ写真を記録するために岐阜に戻ってきます。あとは、当日色々手伝ってもらうアルバイトスタッフを2人くらい呼んできて…という感じです。


日比野さんが所属し、2017年まで活動した「The WANDER」のCDジャケット。

出演バンドの音楽を特等席で! 実行委員長の苦悩と喜び

MM:実行委員の仕事で大変なことは何がありますか? 事前にやることで、何が一番ウェイトをしめているのでしょうか?

日比野:そうですね、一番大変なのはバンドさんに声をかけていくことですね。スケジュールが合わなくて出られないという方も出てくるので、その辺の調整はやはり大変です。あと昨年からは岐阜のバンドだけでなく、他の地方で活動している岐阜出身の人がいるバンドとか、東京で頑張っている岐阜出身のミュージシャンをお呼びするということもやっています。そういう人を地元の人に紹介したいという思いもあって。ですが、そのためには交通費の支給などお金がかかってしまうので、企業さんに協賛のお声がけをしたりしています。これも公募ではなく、繋がりのある人から声をかけて…という感じです。

MM:お金の問題は色々ついて回りますよね。

日比野:出演バンドさんは、出演するために色々費用がかかったりもするので、昔でいうチケットノルマなどをできるだけ軽くしてあげたいなと思っています。岐阜のバンドマンやインディーズバンドを応援している人に援助や協賛をもらうようにして、できるだけ出演バンドさんに負担をかけないようにしようと。

MM:大変なことをお聞きしたので、楽しいことについても聞きたいと思います。長年運営されている中でやりがいを感じるのはどんな時ですか?

日比野:ちょうどこのインタビューの前日に、コンピアルバムに提供してもらった曲をいち早く聴けちゃうプレイリストを公開したりしたんですが、そういう出演バンドの曲を並べたりするのが楽しかったりしますね。

MM:特等席で出演バンドの音楽が楽しめるというところですね。

日比野:そうですね。


2023年開催時に配布予定のコンピレーションアルバム。

胸を掴まれてグッと感情が昂るような音楽を地元から発信

MM:地域のシーンって面白いなと個人的に思っています。普段テレビには出てこない人たちでも攻めた音楽をやっていたり、良いバンドがたくさんあるので、岐阜の音楽シーンの盛り上がりが人目に触れる機会があるというのは素晴らしいことだと思います。応援しております!

日比野:ありがとうございます。イベントは2日間ありますが、きっと1日目も2日目もどこかで泣いちゃうシーンが出てくると思います。なんかこう胸を掴まれてぐっと感情が昂っちゃったりするような音楽を地元から発信しているバンドがあるということをもっとたくさんの人に知って欲しいなと思います。最初は私利私欲で始まったイベントですけど、今は僕みたいに楽しんでくれる人がもっと増えたらいいな、広がっていけばいいなと思ってやっているので、そういう出会いのきっかけになれたらいいなと思っています。

MM:チケットはどうすれば手に入りますか?

日比野:チケット予約は随時受け付けています。出演者さんに連絡していただくか、SFTのメールアドレスの方に連絡をいただくと予約できます。出演者さんから買っていただくと、チャージバックがその出演者さんに入りますが、もしお知り合いや推しのバンドがなければ『SWEET FISH TOWN』にご連絡ください。

MM:最後に一言、会場に来られる方々へのメッセージをお願いします。

日比野:このイベントが岐阜のバンドの見本市みたいになればいいなと思っています。いろんなジャンル、いろんな世代、いろんなスタイルのアーティスト、バンドが集まっているので、ぜひたくさんバンドを見て楽しんでくれたら嬉しいなと思います。もちろん今回出てくれるバンドが岐阜のバンドの全てではないですが、2日とも最初から最後まで見ていただければと思います。

***

日比野さんの熱い想いで築き上げられてきた『SWEET FISH TOWN』は、今年も「岐阜 CLUB ROOTS」にて2Daysで行わる。岐阜ならではの力強いステージを体感してみて欲しい。

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『SWEET FISH TOWN 2023』
【日時】
DAY1:2023年11月25日(土)
DAY2:2023年11月26日(日)
open 15:30 / start 16:00(終演20:25予定)

【会場】
岐阜CLUB ROOTS
(岐阜県羽島郡岐南町上印食8丁目50)

【料金(各日)】
予約¥2,400 / 当日¥2,900
(入場時ドリンク代¥600必要)
※2日目割(-¥600)あり

【チケットのお申し込み】
出演する各アーティスト、または下記のメールにて

メール
[email protected]

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